けんちくや前長

「素足の家」とは?

私たちがつくる住宅は、「素足の家」と名付けています。

「素足の家」は、「住まい手が健康で、快適に暮らすこと」を追求する、本質的で、普遍的な循環型の現代民家。

無垢の木でつくられた家の香り。肌触り。ゆらぎ。素足で暮らすほど心地よく、心も身体も解れる感覚。何十年先も穏やかに安心して暮らすために、昔ながらの木の家の良さを残し、現代の課題を解決していく。

伝統工法と現代技術が織りなす、「これからの木組みの家」です。

1.
伝統的な大工技術
「木組み」でつくる

不揃いの木を前に、どこに、どの方向に使うのか、仕口(しくち)・継ぎ手(つぎて)といった接合部をどう使い、どう加工するのか。そういった伝統的な技術や知恵を活かし、金物などに頼らず、木だけで組み上げていく手法を「木組み」といいます。実は木組みの家1棟分の構造材を加工するために、大工棟梁は2か月以上の作業を必要とします。現代ではプレカットという機械加工が主流となる中で、ここまで人の手で丁寧につくりきるのが「素足の家」です。

木使い・気遣い

人の手をかけると、心が入ります。木組みの家は、全てが木で組まれるので、完成後に見えなくなる木もあれば、そのまま見える木(柱・梁・桁など)もあります。「この木は力持ちだから、重みを負担してもらおう。」「この木は美しいから、魅せる場所に居てもらおう。」一期一会で出会う木を見て、住まい手の暮らしを想像し、その木の個性にあった居場所をつくる。これが大工の木使いと気遣いです。

「素足の家」はこの積み重ねでつくられています。部材の加工方法や仕上げ、魅せ方までを総合的に考え、丁寧に扱わなくてはならないこの仕事は、知識と経験のある大工棟梁による手仕事だからこそ、といえます。

2.
大工が考えた、
無垢材の耐力壁

2015年、私たちが独自に開発した耐力壁「蔵パネル」・「玄パネル」が国土交通大臣認定を取得しました。これらは、地震の揺れに伴う木の“めり込み” 性能を活かし、強い耐震性を持った構造用パネルです。

「素足の家」では、この「蔵パネル」を壁面だけでなく屋根や天井面で構造用合板(薄い大きな平板を接着剤で重ねた板)の代わりとして応用しています。このパネルの大きな魅力は、全て無垢の木でつくられていることです。無垢の木は透湿性・調湿性に優れているため、湿気を溜めやすい構造用合板と比べて、結露やカビのリスクが低減します。また、接着剤を使わないので、化学物質の影響を受けることもありません。さらに、金物も使わないので、構造材でありながらそのまま見せても美しいパネルでもあります。

こういったことから、昨今では設計事務所や同業の工務店さんでもご使用いただく案件が増えてきました。大工の知識と経験から生み出されたパネルは、今や「素足の家」に無くてはならない存在であると同時に、けんちくや前長が誇る素材でもあります。

蔵パネル(左)と玄パネル(右)。
いずれも2015年に木造軸組耐力壁として国土交通大臣認定を取得。

3.
夏の蒸暑も快適に

昨今の夏の蒸暑は、私たちの身体に大きな負担になりつつあります。これは今後も続くことでしょう。「素足の家」では、これまでの木組みの家では無し得なかった断熱構造を実現し、木質系断熱材を使って、冬はもちろん、蒸し暑い夏も涼やかに・快適に過ごせる温熱環境をつくり出しています。

木組みの家が、暑く・寒いと言われる理由

「木組みの家は、暑いし、寒い」と言われることがありますが、この理由は構造にあります。

伝統的な木組みの構造は、柱と柱の間に貫を通し、それらを下地として壁を仕上げています。縦に、横に、部材を組み合わせることで地震の揺れにしなやかに対応できるのです。ただ、そこに断熱材を入れる場合、必ずしも十分な厚みを確保できる空間があるとは限らず、部材同士のわずかな隙間や熱橋などにより、外気の影響を受けやすくなります。

昔ながらの木組みの家の窓辺

涼しく・暖かい。
心地よさを目指す「素足の家」

「素足の家」では「伝統的な木組みの大切なところは残しつつ、厚みのある断熱材をしっかり入れたい」という思いから、私たちならではの発想で、高い断熱性能を担保する構造を実現しました。

そこで重要な役割を果たしてくれるのが、当社の開発した「蔵パネル」です。このパネルを活用することで、十分な断熱材を収める空間の確保と、その重みをしっかりと受け止める構造が可能になりました。また、パネル自身も木質系断熱材の役割をも担ってくれるので、より一層、断熱性能を高めることができるのです。

建て方時、蔵パネルを敷き込む様子

安心で安全な、木質系断熱材

「素足の家」の断熱材は、すべて木という単一の素材です。それも一種類ではなく、硬質系断熱材・蔵パネル・吹き込み断熱材といった三重の断熱構造をとり、壁には標準で100mm、そして夏の強い日差しを受ける屋根には300mmもの厚みを持たせています。(標準仕様の場合)

木質系断熱材の魅力は、断熱性・蓄熱性だけではありません。耐久性・防音性・耐火性、そして特に透湿性・調湿性にも優れています。日本の家づくりでは、冬は結露、夏は蒸し暑さ、梅雨は湿気によるカビ・ダニ・ハウスダストなど、一年を通じて湿度の課題に直面しています。特に昨今の厳しい夏の「蒸し暑さ」のもとになる湿度を調整することはとても大切。湿気を留めず上手に逃がす(透過させる)ことを考えなければいけません。

木質系断熱材は自然の力で、普段は見えない壁の中までしっかりと調湿してくれる最適な素材なのです。

木で構成される空間は、五感で感じる心地よさと直結します。土に還ることのできる素材なので、人にも、建物にも、環境にも、安心で安全。「木で解く前長」ならではの断熱構造です。

4.
変わるデザイン・
変わらないデザイン

四寸勾配の切妻屋根の外観。天井高を抑えながら、深い軒越しに外へとつながる景観。土間の作業場、畳の大空間。昔からある木組みの家は、その土地で磨かれた用の美、普遍的なデザインがあります。一方で、現代の家は昔と比べるともっとコンパクトになりました。生活動線、使い勝手、設備、間取りの取り方も違います。

「素足の家」では日本の普遍的な美しさを、現代の住まい手の暮らしにあった形でバランスよく取り入れ、デザインすることを心がけています。

そしてもう1つ大切にしたいデザインは、その家が地域にとって豊かな存在となること。季節を感じる彩のある植栽、心地よい風が流れる敷地。美しいの佇まいの建物。プライバシーを十分保ちつつも、家の前を通る人々がほっとしたり、嬉しい気持ちになる。敷地全体で、地域に愛されるデザインを心がけています。

5.
地域の循環を育み、
長く、安心して暮らす

「素足の家」は、近くの山の木や素材で、地元の職人が建てる家です。輸送コストなどの環境負荷も少なく、地域経済を助け、素材も同じ環境で使われる事でストレス無く、自然と長持ちする家になっていきます。

栃木県は、有数のスギ・ヒノキの産地であり、戦後植林された木々が、構造材を製材するのに十分な大きさに生長し、伐り時を迎えています。野菜も生長したら、美味しく食べられるタイミングで収穫するのと同じように、山の木も、使うために適したサイズで伐採し、また植えて育てて、使うという循環利用が必要です。水源、光合成による酸素の供給、土砂災害の防止、生物多様性、など、森林にはとても多くの役割があり、それを果たす為には適度な管理が欠かせません。

「素足の家」では、柱・梁・桁・土台・床板・壁板・天井板・建具材・家具材に至るまで、栃木県東部(八溝地区)のスギや、栃木県西部(鹿沼地区・みかも地区)のスギ・ヒノキを主に使用しています。

「素足の家」をつくり暮らすことで、住まい手も私たちも、自ずとこの地を守り、豊かな循環の一部となっていけたらと願っています。