KENCHIKUYA MAECHOU

「素足の家」とは?

私たちがつくる住宅は、「素足の家」と名付けています。

「素足の家」は、「住まい手が健康で、快適に暮らすこと」を追求する
本質的で、普遍的な循環型の現代民家。

無垢の木でつくられた家の香り。肌触り。ゆらぎ。
素足で暮らすほど心地よく、心も身体も解れる感覚。

何十年先も穏やかに安心して暮らすために、昔ながらの木の家の良さを残し、
現代ならではの課題を解決していく。

伝統工法と現代技術が織りなす、「これからの木組みの家」です。


伝統的な大工技術「木組み」でつくる

不揃いの木を前に、どこに、どの方向に使うのか、仕口(しくち)・継ぎ手(つぎて)といった接合部をどう使い、どう加工するのか。

そういった伝統的な技術や知恵を活かし、金物などに頼らず、木だけで組み上げていく手法を「木組み」といいます。

実は木組みの家1棟分の構造材を加工するために、大工棟梁は2か月以上の作業を必要とします。現代ではプレカットという機械加工が主流となる中で、ここまで人の手で丁寧につくりきるのが「素足の家」です。


木使い、気遣い

人の手をかけると、心が入ります。

木組みの家は、全てが木で組まれるので、完成後に見えなくなる木もあれば、
そのまま見える木(柱・梁・桁など)もあります。

「この木は力持ちだから、重みを負担してもらおう。」
「この木は美しいから、魅せる場所に居てもらおう。」

一期一会で出会う木を見て、住まい手の暮らしを想像し、その木の個性にあった居場所をつくる。

これが大工の木使いと気遣いです。
「素足の家」はこの積み重ねでつくられています。

部材の加工方法や仕上げ、魅せ方までを総合的に考え、丁寧に扱わなくてはならないこの仕事は、知識と経験のある大工棟梁による手仕事だからこそ、といえます。


夏の蒸暑も快適に暮らす

昨今の夏の蒸暑は、私たちの身体に大きな負担になりつつあります。
これは今後も続くことでしょう。

「素足の家」では、これまでの木組みの家では無し得なかった断熱構造を実現し、
木質系断熱材を使って、冬はもちろん、蒸し暑い夏も涼やかに・快適に過ごせる温熱環境をつくり出しています。

木組みの家が、暑く・寒いと言われる理由

「木組みの家は、暑いし、寒い。」と言われることがあります。
この理由は断熱構造にあるのですが、現代の木造住宅と比べてみるとその違いが見えてきます。

一般的な木造住宅では、梁や土台の上に構造用合板(薄い板を接着剤で重ねた大きな平板)を張り、その上に断熱材・シート・垂木などを重ねていく構造をとります。

合板はその重量をしっかり支えるので、断熱材を多量に含む家をつくることができます。また、合板によって建物自体も揺れに強くなり、気密性も高めることができます。

ただ、合板を使うことで、接着剤から放出される化学物質の影響を受けたり、合板で湿気が閉じ込められて結露やカビのリスクが起きやすいといった課題もあります。

一方、木組みの家は、そもそも合板を使いません。

木組みは、合板が生まれるずっと前からある伝統工法です。
木と木を組むことで、お互い引き合い・押し合い、地震の揺れにはしなやかに対応してきましたが「断熱材のために板を張る」という構造上の前提がそもそも存在しません。

木と木にはわずかな隙間も多く、外気の影響も受けやすくなります。

無垢の木の空気感が漂う素晴らしい木組みの家でも、暑い・寒いと言われる理由はここにあります。

単純な軸組みで構成される従来の木組みの家

木組みなのに、断熱性能の高い「素足の家」

木組みの家で断熱力を高めるためには、断熱材を多く組み込む素地が必要です。
つまり、断熱材やシート、垂木の重量を支える板が必要になります。

合板に代わるその板が、当社が独自で開発した「蔵パネル」です。

「素足の家」では木組みの大切なところを残しながら、この蔵パネルを標準的に使うために、木の組み方を工夫し、屋根・床・壁にしっかり断熱材を取り込める構造を実現しました。

さらに良いことに、この蔵パネルは金物も接着剤も使わず、全て無垢の木でつくっています。

化学物質も放出しませんし、透湿性にも優れています。
地震に対しても、揺れに伴う木の「めり込み」性能を活かして強い耐震性を確保しました。(2015年、木造軸組耐力壁として国土交通大臣認定を取得

「素足の家」は、これまでの木組みの家が抱える温熱の課題を解決できる家なのです。

屋根に「蔵パネル」を張っていく様子

断熱材の重みをしっかり支える「素足の家」の構造

安心で安全な、木質系断熱材

日本の家づくりでは、冬は結露、夏は蒸し暑さ、梅雨は湿気によるカビ・ダニ・ハウスダストなど、一年を通じて湿度の課題に直面します。

特に昨今の厳しい夏の「蒸し暑さ」のもとになる湿度を調整することはとても大切。

断熱性能の高い家はなおさら、湿気を留めず上手に逃がす(透過させる)ことを考えなければいけません。

「素足の家」では、断熱材の中でも特に調湿・透湿性に優れ、化学物質を使わない木質系断熱材を使っています。

壁には標準で100mm、そして夏の強い日差しを受ける屋根には300mmもの厚みを持たせ、多重、かつ通気性の良い断熱構造を実現しています。

人にも、建物にも、環境にも、安心で安全なものを選びたい。
「素足の家」ならではの断熱構造です。

「素足の家」の木質系断熱材

屋根の断熱構造

変わるデザイン・変わらないデザイン

四寸勾配の切妻屋根の外観。
天井高を抑えながら、深い軒越しに外へとつながる景観。
土間の作業場、畳の大空間。

昔からある木組みの家は、その土地で磨かれた用の美、普遍的なデザインがあります。

一方で、現代の家は昔と比べるともっとコンパクトになりました。
生活動線、使い勝手、設備、間取りの取り方も違います。

「素足の家」では日本の普遍的な美しさを、現代の住まい手の暮らしにあった形でバランスよく取り入れ、デザインすることを心がけています。

そしてもう1つ大切にしたいデザインは、その家が地域にとって豊かな存在となること。

季節を感じる彩のある植栽、心地よい風が流れる敷地。美しいの佇まいの建物。
プライバシーを十分保ちつつも、家の前を通る人々がほっとしたり、嬉しい気持ちになる。

敷地全体で、地域に愛されるデザインを心がけています。


地域の循環を育み、長く、安心して暮らす。

「素足の家」は、近くの山の木や素材で、地元の職人が建てる家です。

輸送コストなどの環境負荷も少なく、地域経済を助け、素材も同じ環境で使われる事でストレス無く、自然と長持ちする家になっていきます。

栃木県は、有数のスギ・ヒノキの産地であり、戦後植林された木々が、構造材を製材するのに十分な大きさに生長し、伐り時を迎えています。

野菜も生長したら、美味しく食べられるタイミングで収穫するのと同じように、山の木も、使うために適したサイズで伐採し、また植えて育てて、使うという循環利用が必要です。

水源、光合成による酸素の供給、土砂災害の防止、生物多様性、など、森林にはとても多くの役割があり、それを果たす為には適度な管理が欠かせません。

「素足の家」では、栃木県東部(八溝地区)のスギや、栃木県西部(鹿沼地区・みかも地区)のスギ・ヒノキを主に使用しています。

柱・梁・桁・土台・床板・壁板・天井板・建具材・家具材に至るまで、栃木の木を使用しています。

「素足の家」をつくり暮らすことで、住まい手も私たちも、自ずとこの地を守り、豊かな循環の一部となっていけたらと願っています。

私たちは2019年4月、パッシブハウスジャパンに加盟しました。

これからも、住まい手の健康や快適な暮らしと環境を考えながら、「素足の家」をご提案していきたいと考えています。